
Booming!(大阪府ベンチャー企業成長プロジェクト)について
注目されるBooming! 活動
2015年8月より、EO大阪では大阪府のベンチャー振興予算をお預かりし、大阪でのベンチャーエコシステムを作るべく、「Booming! 」という事業を行っています。
8月末に実施した活動告知の為のイベントには、事前告知期間がたった2週間しかなかったにもかかわらず、在阪の起業家が200名以上も集まり、イベントは大盛況に終わりました。
その時の私の率直な印象は、「関西にも起業家がこんなにいるんだ!」でした。
東京を中心とした首都圏ではたくさんの若手起業家が日々勃興しています。
その動向は、ニュースでも、そして自分自身の肌感覚でも感じていました。
実際東京に出張すると、若手の起業家によく出会います。
一方で大阪はといえば、なかなかそうした若者に会うこともなく、もしかすると大阪には起業家がいないのではないかと不安になることもありました。
EO大阪のメンバーとも時折「どこかにいい起業家はいないかな?」という話をしますが、誰といって名前が上がらず、会話が終わってしまうことがありました。
そうした状況下、短期間の告知にもかかわらず、これだけの起業家が集まったことは驚きでした。
また、その中からまたたった2週間の応募受付期間にもかかわらず、100社近くの起業家たちがBooming!へ応募してくれました。
そこからさらに書類選考、プレゼンテーション審査を経て、21社の将来性ある起業家たちが9月末、晴れてBooming! メンバーとして選ばれたのでした。
関西経済圏における起業家と起業家支援環境についての考察
Booming! では、現在の関西経済圏における起業家支援環境について、支援機関の支援体制は十分に整っていると考えています。
行政におけるソフトハード両面での支援体制に始まり、関西を投資対象としたベンチャーキャピタルも増加しています。また民間大手企業におけるインキュベーション施設の運営など、なんとも贅沢な環境です。
しかしながらそれに比べ、十分な経験や知識を持った起業家当事者が少ないと考えています。
これには幾つもの理由があると思われます。
まずは情報、知識の不足。
基本的な経営に関する知識を有さず、それを持った人とのネットワークもない。そういう状況では、どれだけ魅力的なビジネスモデルを描いたとしても、うまく組織運営やマーケティングが行われません。
また、資本に関する知識も、東京に比べて相対的に弱いと感じます。
資本をうまく活用することにより、今よりずっと効率的に企業を伸ばせるのに、それを知らないことにより競争に負け、消えていく会社もあります。とても残念なことです。
次に足りないものは、人的ネットワーク。
人と人とのつながりが希薄で、本当に必要な人材に、必要なときに出会えていないという問題があると感じています。ときにその必要な人材とは、悩みを相談できる経営者仲間かもしれません。ときにそれは、会社の資本政策を立案実行してくれるCFOかもしれません。ときにそれは重要な支援をしてくれるエンジェルかもしれません。そうした人的ネットワークが、東京に比べてやはり弱いと言わざるをえません。
こうした起業家の知識、ネットワーク不足により、起業家自身の成長が遅れ、それが競争力の差になっているのではないかと思っています。
Booming! の活動方針
上記のような環境を考えるに、必要なものは起業家自身の成長です。
それはスキルもさることながら、人間性まで含め、人が応援したい、共に働きたいと思わしめるような起業家としての成長です。
そのためには、いわゆる支援とは、どうあるべきでしょうか?
トマトの栽培で言えば、潤沢に肥料や水を与えるのではなく、乾いた大地で育てた方が甘い、旨味のぎゅっと詰まったトマトが出来上がると言います。
起業家の成長も同じではないかと考えています。安易に売上を付けることや、人材を紹介するなど、助けの手を差し伸べることが必ずしも起業家の成長につながるものではないと考えています。
私は昔、あるベンチャーキャピタリストからこう教えられました。
「レモンは3年で腐り、真珠は8年でその輝きを増す。」 もしくは、 「水を与えるのではなく、井戸の彫り方を教えなさい。」 とも言われます。
本当に、今後の関西経済を担う起業家を育てるためには、短期的に売上をつけて成長したように見せかけるのではなく、実力と魅力のある起業家を育てるために、厳しく自分自身と向き合う環境を用意してあげることが必要なのではないかと考えています。
Booming! の活動内容
Booming! では大きく4つの活動を行っています。
(1)上場企業の創業経営者による1対1のメンタリング
上場企業を作った経営者が、Booming!メンバーに個別でメンタリングをします。本人と向き合い、その考え方や経営手法、現実的な問題の解決まで、必要に応じてメンタリングを行っています。
(2)Boomingu!参加者同士によるクローズドな経験共有活動
起業家が抱える、他には言えない課題を守秘義務を前提として開示し、その課題の解決に資する経験を相互に共有することで問題解決を図ります。
(3)成功起業家/専門家による講演会
成功者や専門家の講演を少人数で聞くことにより、自身の振り返り、目線の向上を目指します。
(4)経営の基礎の再学習プログラム
起業家のほとんどが、体系的に経営を学んでいません。改めてこのタイミングで体系的かつ実務的な経営手法を学び、自身の経営手法を振り返ります。
最後に
東京では起業家の生態系が生まれつつあるのに、大阪にはそれがありませんでした。ますます東京一極集中が進む日本の経済の中で、大阪という町がどういう役割を担うことができるのかというのは、私は重要なテーマだと思っています。
東京一極集中でもいいではないかという意見もあります。しかし、東京に一極集中することの弊害も当然あるでしょう。
経済活動においては世界でも稀有な成功モデルとなったことから、まるで世界唯一のアントレプレナーシティのように語られる米国シリコンバレーは、ニューヨークに対するカウンターカルチャーとして存在しており、結果それが米国経済の発展の一助となっています。
日本においても色々なスタイルの経済発展があって良いはずです。時間を巻き戻してみれば、研究開発型の製造業は京都で勃興発展してきた会社も多く、それが京都経済を支えるものとなっており、日本経済の強みであるものづくりの土台を支えていると言っても過言ではありません。 この時代、東京を中心として日本のIT業界が発展してきました。
今回Booming!の活動に選ばれた21社は、実は半数以上がIT以外の業界の会社です。
人材、製造業、6次産業、飲食、教育、流通など幅広い業種が集まっています。
この活動から、将来の関西経済、ひいては日本経済を牽引し、世界を股に活躍する企業、起業家が出てくることを心から楽しみにしています。
シナジーマーケティング株式会社 代表取締役 谷井 等